【実践コラム】資金使途について

運転資金と設備資金は返済原資が違います

資金使途とは、その名の通り「お金の使いみち」です。借りる側は、あまり意識しないかも知れませんが、銀行側にとっては、資金の使い道はとても重要なポイントです。

「資金使途」は大きく2つに分けることができます。
「設備資金」と「運転資金」です。

「設備資金」とは、事業のための資産を購入するための資金です。店舗、工場、自社ビル、機械、車両などが一般的です。設備への投資は将来の新たな利益を生み出しますので、新たに発生する利益で借入の返済を行う事が可能です。また、購入する土地や建物を担保にすれば、万が一計画通りに行かなくても、資産の売却代金により借入を返済することもできます。

よって設備資金の審査のポイントは、「本当に計画通りに利益を出せるのか」と言う点と、「融資金は担保でどれくらいカバーできているのか」の2点です。

「短期運転資金」とは、仕入れ代金の支払い時期と、売上代金の回収時期にズレが発生した時に必要となる資金です。現金買付で100万円の仕入を行い、1ヵ月後に150万円で販売出来たとしても、100万円が1ヵ月間在庫として寝てしまうため、その間は次の仕入が出来ません。このズレを埋めるための資金が短期運転資金です。

設備資金と違って、短期運転資金の返済原資は利益ではなく売上金の回収金です。仕入資金として100万円を借りて購入した商品が150万円で売れたときには、粗利の50万円ではなく仕入代金の100万円を一括で返済するのが本来の形です。
実際には返済してもすぐに次の仕入資金が必要になりますので、実務上は短期借入として100万円を借りたままにしています。

短期運転資金の融資は高度な審査能力を要します。借りる側もしっかりとした会計や財務の知識が無ければ、いつの間にか返せなくなってしまう可能性があります。
100万円で仕入れた商品が売れ残れば返済が出来なくなると言うのは分かりやすいと思いますが、150万円で販売するつもりが130万円でしか売れなかった場合はどうでしょうか。
人件費や家賃などの固定費が50万円必要であったとすれば、粗利は30万円ですので20万円の赤字となります。商品の仕入れ資金として借りたはずの100万円のうち20万円が、赤字補てんに使われてしまいましたので、次の仕入は80万円しか出来なくなってしまいます。

毎月の仕入れ額や売上の額は一定ではありませんので、仕入資金が赤字の補てん資金となっていてもすぐには気づかないのが問題です。じわじわと赤字補てんの割合が大きくなっていき、返せない状態になって初めて気付きます。借りたお金はどこに行ったのだろうか・・・良く耳にするセリフです。

実は簡単な算式で本当に必要な短期運転資金の額を算出することができます。
銀行員はこの算式に基づいて融資額の上限を算出しています。
経営者の側も、いつの間にか返済が出来なくなってしまったという事態に陥らないよう、会計や財務の知識を身につけ短期運転資金として借りたお金が不健全な使われ方をしていないかを定期的にチェックすることが必要です。