【実践コラム】前のめり経営がもたらすリスク

いつも資金に困っている経営者様の共通点かもしれません。

私は長年、多くの経営者と向き合ってきました。その中で、ある共通の課題に直面することがあります。それは、手元にお金が入った途端、すぐに限界までお金を使ってしまう経営者の姿です。

日々の資金繰りに苦労しているにもかかわらず、融資金が入ったら、仕入や採用を「マックス」で行う。そして数か月後には、再びお金が底をつく。この悪循環を繰り返す経営者が、実は少なくありません。

もし、この状況に心当たりがあれば、このコラムを最後までお読みください。

■ 借入金の本質とは
銀行からの借入金は、一時的に使える資金ではありますが、決して「自由に使えるお金」ではありません。これは会社の負債であり、必ず返済しなければならないものです。借入金をすぐに使ってしまうことは、会社の財務基盤を危うくする大きなリスクとなります。

■ なぜ借入金をすぐに使ってしまうのか
多くの経営者が借入金をすぐに使ってしまう背景には、以下のような要因があると考えます。

1.短期的な視点:目先の問題解決や事業拡大に焦点が当たりすぎている。

2.過度の楽観主義:将来の売上や利益を過大に見積もっている。

3.リスク認識の不足:資金不足のリスクを適切に認識できていない。

4.財務管理能力の欠如:適切な資金繰り計画を立てられていない。

■ 借入金の適切な管理方法
借入金を効果的に活用し、会社の成長につなげるためには、以下のような取り組みが重要です。

1.資金繰り計画の策定:
・最低1年間の資金繰り表を作成し、毎月更新する。
・借入金の返済スケジュールを明確にし、計画に組み込む。

2.借入目的の明確化:
・なぜ借入が必要なのか、具体的な使途を明確にする。
・借入金で得られる将来のリターンを慎重に検討する。

3.返済能力の評価:
・現在の収益状況で返済が可能かどうか冷静に判断する。
・返済に必要な利益を確保できる事業計画を立てる。

4.緊急時の備え:
・借入金の一部を緊急時の資金として確保する。
・予期せぬ事態に備え、常に一定の手元資金を維持する。

5.定期的な財務状況の確認:
・毎月のB/S、P/Lをチェックし、計画と実績の差を把握する。
・資金繰りの状況を常に把握し、必要に応じて計画を修正する。

■ 長期的視点の重要性
会社経営は長期戦です。目先の問題解決や事業拡大に焦点を当てすぎると、将来の安定性を損なう可能性があります。借入金は、将来の成長のための種まきであり、慎重に扱う必要があります。

経営者には、物事を迅速に進めたい、早く成果を出したいという強い意志があります。この姿勢自体は、決して悪いものではありません。むしろ、ビジネスを前進させる原動力となり得るものです。

しかし、同時にこの特性は「せっかち」「我慢できない」といった負の側面も持ち合わせています。特に資金管理においては、この性質が致命的な経営リスクとなる可能性があります。

「分かっているけど、自分をコントロールできない」と感じていらっしゃる場合は、外部の専門家を活用することも、一つ選択肢です。客観的な視点と専門的なアドバイスが、より健全な資金管理の実現につながります。