【実践コラム】中小企業のライフサイクルと借入戦略
企業の成長段階に応じた賢い資金調達の方法。
企業には導入期、成長期、成熟期、衰退期というライフサイクルがあります。各段階に応じた適切な借入戦略を立てることが、健全な経営につながります。飲食店を例に、ライフサイクルごとの借入の考え方を見ていきましょう。
■ 導入期:成長の土台をつくる借入
導入期の借入は、将来の成長に向けた投資です。例えば、500万円の自己資金だけでなく、1,000万円の借入を加えて1,500万円で店舗をオープンすれば、より大きな成長が期待できます。ただし、借入額に見合う収益を上げられるかどうかが重要です。5~7年後の目標規模を明確にイメージし、それに見合った借入額を設定しましょう。1,000万円を7年で返済するなら、7年以内に1,000万円以上の剰余金を生み出せる成長曲線が必要です。
■ 成長期:拡大を支える借入
成長期には、事業拡大に伴う運転資金需要が高まります。飲食業以外の業種では、売上債権や在庫など、資産の増加に伴い借入も増加します。成長に応じて増加する運転資金の借入は、比較的リスクの少ない借入です。積極的に活用しましょう。
一方、2店舗目の出店など、新たな設備投資のための借入は慎重に検討しましょう。導入期の借入が順調に返済できていることが前提です。返済が滞っている場合、予定通りの成長が実現できていない可能性があります。
■ 成熟期:借入の見直しと返済
成熟期は利益を享受する時期であり、新たな借入需要は通常ありません。この時期に資金繰りが厳しい場合、成長曲線が予定通りではない可能性があります。
成長の踊り場なのか、衰退期に向かう兆候なのか、慎重に見極める必要があります。必要に応じて、リスケジュールなどの対応を検討しましょう。
■ 衰退期:慎重な判断が必要な借入
衰退期には、事業規模の縮小に伴い借入も減らしていくのが基本です。ただし、店舗のリニューアルや商品改良により第2の成長を目指す場合は、新たな借入を検討することもあります。しかし、衰退期の追加投資は創業時よりもリスクが高いとされます。慎重な判断が必要で、引き際を見誤ると最後に大きな借金を抱えてしまう可能性もあります。
企業にはライフサイクルがあり、山を登った後には必ず下り坂があることを念頭に置く必要があります。自社の現在の位置と目指す成長曲線を常に意識し、それに合わせた借入戦略を立てることが重要です。
適切な借入は企業の成長を後押ししますが、過剰な借入は経営を圧迫します。ライフサイクルの各段階で、借入の必要性と返済能力を冷静に判断し、健全な財務体質を維持しながら成長を目指しましょう。