【経営コラム】人手不足時代の採用・定着戦略(その1)

「求人を出しても人が来ない」は、本当に人手不足のせいか?

「求人を出しても応募がない」、「採用しても、すぐに辞めてしまう」、「若い人が全然来てくれない」最近、多くの中小企業経営者から聞く言葉です。

確かに人手不足は深刻です。少子高齢化が進む以上、「待っていれば、また人が余る時代が来る」と期待するのも現実的ではありません。しかし、ここで一つ考えていただきたいことがあります。本当に「人がいない」から採用できないのでしょうか。同じ地域、同じ業界、同じような規模でも、人を採れている会社はあります。だとすれば、問題は「人がいない」ことだけではありません。「わが社が選ばれていない」可能性も考える必要があります。

■求職者も会社を選んでいる

採用というと、会社が応募者を選ぶ場だと考えがちです。
・「この人は使えるだろうか」
・「長く勤めてくれるだろうか」
・「うちの会社に合うだろうか」
もちろん、それは大切です。しかし、人手不足時代の採用では、もう一つの視点が欠かせません。応募者も、会社を選んでいる。むしろ採用難の職種では、「会社が選ぶ」より先に「会社が選ばれる」必要があります。求人票を見た求職者は、給与、休日、勤務時間、勤務地、仕事内容などを比較します。そして今は、会社のホームページやSNS、口コミなども簡単に確認できます。そのとき、「この会社で働いてみたい」と思ってもらえる材料があるでしょうか。

給与だけ上げれば採れるのか?「結局、給料を上げないと人は来ない」そう考える社長も多いでしょう。確かに給与は重要です。競合企業より著しく低ければ、採用で不利になるのは当然です。しかし、給与だけで採用問題がすべて解決するわけでもありません。仮に月給を2万円上げたとしても、仕事内容がよく分からない、休日が不明確、職場の雰囲気が伝わらない、将来どんな仕事を任されるのかも分からない。これでは求職者は応募をためらいます。

ところが実際の求人票を見ると、「やる気のある方歓迎」「アットホームな職場です」「各種業務を担当していただきます」といった、どの会社にも書ける表現だけで終わっているケースも少なくありません。これでは、求職者から見れば「この会社を選ぶ理由」がありません。

■求人票は「募集案内」ではなく「営業資料」

自社の商品を売るとき、顧客に商品の特徴やメリットを説明するはずです。競合商品との違いも考えるでしょう。では、採用ではどうでしょうか。求人票に勤務条件を書いて、あとは応募を待っているだけになっていないでしょうか。私は、これからの求人票は単なる「募集案内」ではなく、求職者に会社を選んでもらうための営業資料だと考えたほうがよいと思います。

誰に来てほしいのか。その人に何を期待するのか。入社したら、どんな仕事をするのか。どんな力が身につくのか。3年後、5年後にはどんな働き方ができるのか。そして何より、「なぜ、他社ではなく当社で働いてほしいのか」。これを社長自身の言葉で説明できるでしょうか。

■応募が来ないなら「採用活動」を点検する

応募が少ないと、すぐに「今は人手不足だから」と結論づけてしまいがちです。しかし、その前に確認すべきことがあります。給与水準は競合と比べてどうか。年間休日はどうか。仕事内容は具体的に書かれているか。ホームページを見たときに職場の様子が分かるか。応募への返信は早いか。面接まで何日かかっているか。せっかく応募が来ても、連絡に数日かかり、面接を一週間後に設定している間に、他社で採用が決まってしまうこともあります。

■採用力とは、求人広告の上手さだけではありません。

採用力は、会社の待遇、仕事、情報発信、応募対応、面接、そして社長の姿勢まで含めた総合的な企業力そのものです。人手不足に端を発する採用問題は、一社の努力で解消することはできません。しかし、自社が「選ばれる確率」を上げることはできます。だから「最近は人がいないから仕方がない」で終わらせないでください。

採用できない理由を外部環境だけに求めている限り、改善は始まりません。まず見るべきなのは、自社です。「人がいない」のか。それとも、「わが社が選ばれていない」のか。この問いから採用改善を始めてみてください。

そして、もう一つ、採用を増やすことと同じくらい重要なのが、「辞めなくてもよい社員を辞めさせないこと」です。次回は、採用した社員がなぜ辞めるのか。「採用より先に、社員が定着する会社」について考えてみたいと思います。