【実践コラム】投資前に資金配分を決める考え方について

投資の可否は、投資額よりも現金を残す順番で決めます。

前回は、借入を使った投資判断では、返済原資と時間差、最悪シナリオの確認が重要だという話をしました。今回は、投資を実行する前に資金配分をどう決めるかを整理します。

投資の相談では、投資額の妥当性に意識が向きやすくなります。ただ、実務で資金繰りが苦しくなる原因は、投資額よりも資金配分の順番にあることが多くあります。投資の意思決定が早い会社ほど、先に現金が減ってしまうケースが起きます。

資金配分を決める軸になるのは、キャッシュポジションの基準です。最低でも月商一か月分以上のキャッシュを維持する。この基準を守ることを最優先の前提に置きます。投資は、基準を守ったうえで実行するものです。

資金配分は、次の順番で考えると整理しやすくなります。

まず事業継続に必要な支出を先に確保する。次に基準となるキャッシュを確保する。最後に残った余力で投資枠を決める。この順番です。

事業継続に必要な支出とは、毎月必ず出ていく固定費と、季節的に発生する大きな支出です。家賃、人件費、リース料などの固定費に加え、賞与、納税、更新投資といった年に数回の支出も含まれます。これらを見落としたまま投資を組むと、後から資金が薄くなります。

次に、月商一か月分以上というキャッシュの基準を確保します。資金繰り表の中で最も資金が薄くなる月を確認し、基準を割らないことを確かめます。基準を割る見込みがある場合、投資を止める前に設計を見直します。投資時期の後ろ倒し、支出の分割、借入期間の調整による返済額の圧縮。このあたりが現実的な見直しポイントです。

最後に、残った余力で投資枠を決めます。ここで大切なのは、投資枠を一度に使い切らないことです。投資は想定どおりに成果が出ないことがあります。環境が変わることもあります。余力をすべて投資に回すと、軌道修正が難しくなります。

投資枠を決める際は、投資の種類も分けて考えると判断が安定します。守りの投資は優先順位が高く、避けにくい投資です。効率化の投資は回収の筋道が立てやすい反面、導入から効果が出るまでの時間差が生じやすくなります。成長の投資は成果が大きい一方、回収の時間差が最も大きくなりやすい領域です。投資枠の中でどの種類にどれだけ配分するかを決めると、資金繰りのブレが小さくなります。

資金配分の判断が整っている会社は、投資の判断も落ち着いて進められます。基準となるキャッシュを守れている限り、余裕を持って投資の検討ができます。基準を割りそうなときは、早い段階で設計を変えられます。結果として、投資が資金繰りを壊す確率が下がります。

事業継続に必要な支出を確保し、月商一か月分以上のキャッシュを守り、余力で投資枠を決める。この順番が、投資判断を安定させます。

次回は、投資を進める中でキャッシュが薄くなりそうなときに、どの順で手を打つかについてお話しします。