【実践コラム】プロパー当座貸越枠の獲得について

利益と自己資本を磨き、資金繰りの自由度を最大化しよう。

「いつでも借りられる状態」を本気で目指すなら、プロパー当座貸越枠(銀行が与信の“最上位”と位置づける融資形態)の獲得がゴールになります。
枠さえ確保できれば、必要なときに素早く資金を引き出し、返済も自由。季節変動や大型受注への対応力が格段に高まります。

1.資金需要は“経常運転資金”で示す
まず前提として、銀行が枠を設定するのは「常に回し続ける運転資金がある企業」です。売掛金・在庫・買掛金の実態を月次で整理し、「日常的にこれだけの資金が回っている」と明確に示しましょう。

2.利益こそ信用の源泉
当座貸越は、期日返済のない“出し入れ自由”の借入です。銀行が安心して枠を出すには、「利益で将来の返済能力が継続的に確保できる」という確信が欠かせません。赤字決算が続く企業に枠はまず付きませんので、毎期きちんと黒字を積み上げる姿勢を試算表や決算書で示すことが王道です。

3.自己資本で“余裕”を見せる
利益が蓄積され自己資本が厚くなるほど、バランスシートは強固になり、銀行の与信判断は大幅に好転します。自己資本は「返さなくてよい内部のクッション」ですので、ここが薄い間は、枠ではなく1年以内の短期融資で留め置かれがちです。まずは利益留保を最優先に考えましょう。

4.定期的な情報開示と対話
枠は“一度取ったら終わり”ではありません。銀行は最新情報で企業を評価し続けます。月次試算表・資金繰り表をタイムリーに提出し、四半期ごとに事業の進捗を共有する習慣を持てば、「この会社は管理水準が高い」という印象を与え、枠の維持・増枠に繋がります。

5.枠は“信用の循環装置”
当座貸越枠は資金を手元に置くためのものではなく、“信用を循環させる装置”です。枠があることで、社内キャッシュを厚めに保ち、仕入先や人材への投資を機動的に行えます。結果として利益が生まれ、自己資本が増え、さらに枠が拡大するという好循環のスタート地点が「プロパー枠の獲得」です。

・経常運転資金を根拠に需要を提示する
・黒字体質を継続し、自己資本を厚くする
・情報開示と対話で銀行に安心感を与える

この三本柱を地道に積み上げれば、プロパー当座貸越枠は決して夢物語ではありません。枠を手に入れ、資金繰りの自由度を高めて、次の成長ステージに備えましょう。