【実践コラム】金融機関対応のコツ

悪い情報も適切な範囲で共有しましょう

ある社長様から、「金融機関から試算表の提出を求められたが、融資金の一部を個人的な支出に充ててしまっているため提出したくない。断ることはできないか」というご相談をお受けしました。

試算表の提出を拒んだからといって、融資金の一括返済を迫られることはありませんが、金融機関の担当者がネガティブに捉えることは避けられません。まずは、試算表の提出を依頼してきた金融機関の担当者に、試算表が必要な理由を率直に尋ねました。回答は「保証協会に売上高の報告をするため」とのことです。

そこで、「試算表がまだ出来ていないため、売上高だけを集計して提出すればよいか」と確認したところ、それで問題ないとの回答を得ました。金融機関の担当者は、特定の事項を調べたいのではなく、単純に仕事として報告が必要だったようです。

では、仮に試算表の提出が必須とされた場合はどうすべきでしょうか。

原則として、ありのままの試算表を提出し、個人的な支出に流用せざるを得なかった理由を説明します。理由がない場合は、真摯に反省し、決算までに個人的な支出分を会社に戻す努力をすることを約束することが最善です。

試算表の提出(業績の報告)は、金融機関との絶好のコミュニケーションの機会です。今回のように金融機関に対して負い目がある時は、試算表を求めてきた担当者に対して、忙しいなどと不機嫌な態度をとったりする経営者もいます。しかし、こうした行動は不安や保身から来るものであり、何のプラスにもなりません。

金融機関に対しては、悪いことを隠さなくてはならないと考える経営者も少なからずいますが、必ずしもそうではありません。良いことだけでなく、悪いことも報告して相談することが関係構築の第一歩です。金融機関は、透明性と誠実さを評価するため、正直な対応が信頼関係を築く鍵となります。但し、「悪いこと」の程度加減もありますので、判断に迷う場合はご相談ください。

■金融機関対応のポイント(まとめ)

・正直なコミュニケーション:金融機関とのやり取りでは、常に正直でいることが重要です。問題が発生した場合でも、早期に報告し、解決策を共に考える姿勢が求められます。

・透明性の維持:財務状況を透明に示すことで、金融機関との信頼関係を深めることができます。試算表や決算書の提出を求められた際には、正確な情報を提供しましょう。

・プロフェッショナルな対応:金融機関の担当者はビジネスパートナーです。プロフェッショナルな態度で対応することで、長期的な信頼関係を築くことができます。

このように、金融機関との良好な関係を保つためには、誠実で透明なコミュニケーションが不可欠です。試算表の提出を求められた際も、この基本を忘れずに対応することが成功への鍵となります。