【実践コラム】中小企業の財務について(その1)

中小企業の財務の基本: どんぶり勘定からの脱却

新年明けましておめでとうございます。年初にあたり、中小企業の財務について、改めてご提案させていただきます。

多くの中小企業において、財務管理に改善の余地があることは明白です。財務管理が不十分であると、自社の財務状況を金融機関に適切かつ適時に伝えられないため、融資の獲得が難しくなる可能性が高まります。融資を円滑に受けられないと、成長の機会を逃すだけでなく、資金不足に悩むことがあります。従って、財務管理の強化は中小企業にとって非常に重要です。

財務管理を強化するための第一歩は、経営判断を感覚に頼らず、財務データに基づいて行うことです。経営の指針となる正確な財務数値を把握するために、月次試算表の作成が不可欠です。
試算表を通じて、キャッシュフローだけでは把握できない「収益」と「資産・負債」の健全性を把握できます。

感覚的な経営判断や「どんぶり勘定」からの脱却は、以下のような問題を解決する助けになります。

■ 赤字の認識不足
実際は赤字であるにもかかわらず、資金繰りが回っているためそれに気づかないことがあります。赤字を見逃すことは、問題の早期解決を遅らせます。赤字を改善するための対策を講じず、借入金で資金繰りを維持し続けていると、最終的に資金不足に陥る可能性が高まります。

■ 無駄な資金繰りの労力
取引条件によっては黒字でも資金繰りが苦しくなります。このような場合は健全な資金不足ですので、融資を受けることで簡単に解決できる問題です。しかし、融資を受けずに毎月資金繰りに多大な労力をかけている経営者様がいらっしゃいます。経営者が資金繰りに時間を割くことは、本来すべき経営の本質を見失っていることを意味します。

■ 融資チャンスの逃失
本当によくあるケースですが、6か月前なら融資を受けられたというケースです。融資はいつでも受けられる訳ではありませんので、財務状況をタイムリーに管理し、一番借りやすい時に借りておくのが鉄則です。資金が必要なのに融資を断られて困っている企業様の半数は、過去に資金調達のタイミングを逃しています。

こうした問題からわかるように、試算表の定期的な作成は、財務管理を強化するための第一歩です。試算表は、あらゆる経営判断の基盤となる情報を提供します。試算表を毎月作成していない経営者は、今年からその作成に取り組むことをお勧めしま
す。