【実践コラム】中小企業の正しい決算書とは
税務の目線だけでなく、財務の目線も付加しましょう
企業が決算書を作成する目的は大きく分けて2つあります。ひとつは納税額を算出するため、もうひとつは経営状況をステークホルダー(株主、銀行、取引先など)に報告するためです。納税額の算出はもちろん大切ですが、経営者にとっては、資金調達先である銀行への報告の方がより重要かもしれません。
弊所で顧問契約いただいたA社の事例です。「銀行から、決算書の中身についていろいろと指摘され対応に困っている。」と言う相談でした。決算書を見てみると・・・仮払金、前払金、立替金、未収入金、社長貸付金など、銀行が嫌がる勘定科目がたくさん使われています。
決算書は会社の鏡です。銀行員等のプロが見れば、財産や利益の状況だけでなく、会社の雰囲気や社長様の性格まで分かる場合があります。A社の場合、雑資産が多いという事由から、経理業務がずさん、財務会計に明るい人材が社内にいない、社長は会社と個人のお金の区別が出来ていない、利益を大きく見せるために粉飾決算をしているかも、などのイメージを持たれる可能性があります。
この様な決算書が出来てしまう要因は会社にあります。領収証を貰い忘れたり、支払内容を失念してしまったりなどです。会社側が税理士さんに正しい情報を提供しなければ、税理士さんは仮払金や貸付金等の勘定科目で処理せざるを得ません。A社の社長様も、「先生から質問はあったが結局分からずじまいだった。それでも決算は組めていたので、先生が上手に処理してくれているものと思っていた。」とおっしゃっています。
不明な支出が多少あっても確かに決算を組むことは出来ます。しかし、あくまでも税金の算出を目的とした税務目線の決算です。不明な勘定が残っている決算書ではステークホルダーを納得させることはできません。
成長意欲が強い経営者にとって銀行は重要なステークホルダーです。銀行に対して正しい決算報告を行い信頼を得ることが、今後の成長資金の獲得には欠かせません。ステークホルダーの信頼を得るためには、税務の目線だけでなく、財務の目線も決算書に付加することが大変重要です。
弊所では、税務目線だけでなく財務の目線を意識した決算を心掛けています。自社の決算書を財務の目線で検証して欲しいというご要望がございましたら、是非、ご相談ください。