【実践コラム】資金使途の重要性
ずさんな調達は総調達額に影響が出ます
店舗型の事業を営む方から、新規出店資金の調達が上手くいかないというご相談がありました。既に施設を3店舗有しており、今回は4店舗目の出店を計画しているそうです。
財務内容を拝見すると、確かに借入水準はやや高い状態ですが、一定のキャッシュフローは出ており、また、見合いの固定資産も有しているため、全く話を聞いてもらえないレベルではないと感じました。
今回、社長様と経理の担当者で来社されたのですが、社長様はとにかく新しい店舗を矢継ぎ早に出店したい、経理担当者は社長に振り回されて資金調達に奔走しているという印象を受けました。
経理担当者に、融資申し込み時に提出した資料を見せて欲しいと依頼すると、決算書と試算表だけだとおっしゃいます。金融機関に、4店舗目を出店する話もしていないそうです。
これまでの資金調達についても、実際には店舗の出店資金であったが、計画書類を提出したことがなく、全て運転資金として融資を受けてきたとおっしゃいます。借入の中身を見たところ、確かにコロナ融資が過半数を占めています。
業種・業態によって、運転資金の融資上限額はある程度決まっています。一方、設備資金は個別の計画を検証したうえで、総合的に判断されますので、上限額が最初から決まっている訳ではありません。
よって、今回も運転資金として融資を申し込んだ場合、過去の融資が実際は設備資金にあてられたとしても、「運転資金は十分に貸しているでしょ。」となるのは当然です。
経理担当者は、「元々財務の知識がある訳ではないし、資金繰りも厳しいので、運転資金でお金が必要なのか、設備資金でお金が必要なのか区別が出来ていなかった。」とおっしゃっていました。
運転資金の方が提出書類も少なく、申込が簡単ではありますが、借入額に上限があります。使い道が設備であれば、設備資金として個別に調達をすることで、運転資金の枠を残すことが出来ます。
設備資金は見積書や計画書等の提出が必要になりますが、丁寧にひも付きにすることで、調達の総額を増やすことができます。