【実践コラム】経営者と会計の知識について

会計知識の有無が資金調達の成否を分けることがあります

「試算表や決算書の見方が分かりません。」「資金繰りが苦手です。」といった声をしばしば耳にします。よくよくお話をお聞きすると、「勉強したけど理解ができない。」のではなく、「苦手意識があり、そもそも理解するつもりがない。」という方が殆どです。

中小企業経営者の優先順位は営業活動が一番です。会計まわりは自分には関係ないとお考えになるのも分かりますが、会計知識の有無で会社の命運が決まってしまうこともあります。経営者であれば、やはり会計の知識は身に着けておく方が良さそうです。

先日相談に来られたある経営者様の事例です。起業2年目で売上高も順調に伸びていますが、赤字を理由に融資を断られてしまったそうです。試算表を見ると確かに赤字ですが、在庫が計上されていません。在庫の有無を確認すると300万円ぐらいあるとおっしゃいます。帳簿上の赤字は250万円ですので、在庫を計上すると50万円の黒字です。

そのことをお伝えすると、「やはりそうですか。自分の計算では黒字だったのでおかしいと思っていました。」とおっしゃいます。なぜ税理士さんはそのような試算表を作ったのかという恨み節もありました。しかし、この件に関して悪いのは社長様です。誰を責めることもできません。

一般的に税理士は年間の税額を計算するのが主な業務ですので、決算時には必ず在庫を確認して計上しますが、期中は会社の方から申告がなければ、在庫を考慮せずに試算表を作成することもあります。

金融機関の担当者はどうでしょうか。在庫が計上されていないことぐらい気づいてくれればいいのにと感じますが、そのような担当者は稀です。貸し手には何ら落ち度のない話ですので、そこまで期待してはいけません。

融資を断られた本当の理由は分かりませんが、ただ在庫を計上していなかっただけで断りの材料にされてしまうのはあまりにも残念です。事業が軌道に乗り始め、仕入れを増やして事業を拡大するせっかくのチャンスを逃してしまいました。

基本的な会計の知識はその気になれば簡単に身に付けられます。苦手だからという一言で片づけず、理解しようと努めることをおすすめします。