【実践コラム】銀行の役割について
正しい金融機関対応は正しい定義から始まります
「銀行家というのは、太陽が照っている時に自分の傘を差しだし、雨が降り始めるやいなや傘を返せというようなやつだ」と言う有名な言葉があります。トムソーヤの冒険を書いたマーク・トウェインの言葉だそうです。ユニークな言い回しで、なるほどそうだと納得させられる名言です。
しかし、経営者にとっては銀行の役割を取り違えた少し危険な考え方です。そもそも銀行が貸している傘は、雨傘ではなく日傘です。晴れた日には大いに役立ちますが、雨の日に使うものではありません。すぐに使い物にならなくなってしまいます。
銀行が保有しているお金は預金者から預かっているものです。預金者から見れば、業績が悪化して返済の目処が立たない企業に融資をするのは許されない行為です。いろいろな考え方があるとは思いますが、経営者であれば「銀行の姿勢は事実そうである」ことを受け入れる覚悟が必要です。
債権者、債務者と言う考え方でいけば、もちろん銀行は企業より強い立場にあります。しかし、銀行は預かったお金を運用しなければ生きていけません。預金者のお金を運用しなくてはならない銀行と、そのお金を使って新しい事業を起こす経営者はパートナーの関係にあり、その点で銀行と企業は対等です。
銀行の役割を正確に捉えることは経営者にとって重要なポイントのひとつです。銀行は困った企業を助ける救済機関だと考えている経営者は、融資をしてくれない銀行を恨みます。金利を払って銀行を儲けさせる考えなど毛頭ありません。そのような経営者は銀行から敬遠されます。
一方、銀行は現在の事業をワンランク拡大するためのパートナー機関だと考えている経営者は銀行を恨みません。そもそも雨傘は貸してくれないと知っているからです。晴れの日に、さらに前に進むための日傘を借りにいき、その対価として一定の金利を払うことを当然だと考えています。そのような経営者には資金が集まります。
ファイナンスは経営者にとって必須のスキルです。しかし、金融機関の役割を正しく捉えられていないために、間違った銀行対応をしている経営者様を多くお見受けします。まずは、銀行の役割を正確に定義しましょう。