【実践コラム】粉飾決算について

資金調達には効果がないかもしれません

銀行等の金融機関には、程度加減は様々ですが、粉飾を施された決算書が持ち込まれます。粉飾を見抜けずに融資を行えば回収出来ないリスクが著しく高まるため、銀行員も粉飾に騙されない様に気をつけています。

銀行員は、まず、社長の人柄、本社や工場の設備、従業員などの様子を自分の目で見て、決算書の数字と違和感がないか実態調査を行います。ある程度の経験があれば、この時点で粉飾を感じ取ることが出来ます。

主な粉飾決算の例とそれを見抜く方法は下記となります。

■ 在庫の水増し
架空の在庫を計上して利益を増やす方法です。実際に在庫を保管している倉庫などを見学し、決算書の数字と大幅な違いがないか確認します。それ以外にも、決算書から在庫の回転期間を算出し、回転期間が長期化している場合は、在庫の不良化も含めて調査します。

■ 売掛金の水増し
架空の売上を計上して利益を増やす方法です。関係会社等への多額の売上は注意して精査します。それ以外にも、長期間回収されていない売掛金は粉飾の可能性もあるため、取引の事実や売掛先の信用状況を調査します。

■ 架空資産の計上
実際には保有していない資産を計上していたり、経費性の支出を資産計上したりするケースです。金額の大きな設備はその存在を確かめることはもちろん、書類等で本人が所有者であるかも確認します。ソフトウェア等の無形固定資産は粉飾に利用されやすい項目ですので、その内容については注意して調査します。仮払金や貸付金等の雑資産も調査の対象になります。

■ 負債隠し
負債を決算書に載せない方法です。決算書に載っているものがあるかどうかを見極めるのに比べて、無いものがあるかどうかを調べるのは困難です。簿外の負債を見抜くのは簡単ではありませんが、支払金利が高い、不明瞭な手数料等が発生している、代表者へ毎月定額の支払いが発生している、等から地道に探っています。

一般的な粉飾例について解説しましたが、実は、粉飾を見抜く最も簡単な方法は、キャッシュの動きを追いかけることです。架空売上や架空在庫により損益を黒字にしても、実際にキャッシュは入ってきませんので、経常収支比率等で見れば、必ず資金が赤字になっています。

粉飾は必ずどこかに綻びが出ます。粉飾の認定に至らなかった場合でも、何となく違和感がある決算書として融資は回避される可能性が高くなりますので、資金調達を目的とした粉飾はあまり効果がないかもしれません。