【実践コラム】社長の個人保証について
来年度から金融機関に説明義務が課されます
金融庁は、経営者個人が企業の連帯保証人となる「個人保証」の制度を見直すことを明らかにしました。来年度から、金融機関が個人保証を求める場合は、説明義務を課すことを検討しているようです。
しかし、金融機関サイドからは、「現実問題として個人保証を急に減らすことは難しい。」と言った声も出ているようで、全ての経営者が自動的に個人保証を免れるということはなさそうです。
どのようなケースであれば、個人保証を外すことができるのか、平成25年に策定された「経営者保証に関するガイドライン」の活用に関する参考事例集の中から、事例をひとつご紹介します。
■ある地域銀行の事例
経営管理の強化に取り組んでいる取引先に対して経営者保証を求めなかった事例
主債務者及び保証人の状況、事案の背景等
・当社は、建設工事及び建材卸売業を営んでおり、建材卸売部門では大手メーカーや商社等と代理店・特約店契約を結んでおり、多種多様な商品(内外装タイル、ユニットバス、耐火壁、エレベーター等)を取り扱っている。
・震災復興関連工事の受注の増加により増収基調が続いており、内部留保も厚く堅固な財務内容を維持している。
・当行は、メイン行ではないものの、増加する震災復興関連工事に伴う資金需要に対応してきたところ、当社から短期資金の借入の相談があった。
・また、借入の相談の際に、当行本部から送付されたガイドラインのパンフレットを見た経営者から、経営者保証を求めない融資の相談を受けたことから、ガイドラインの内容を改めて説明するとともに、当社から提出のあった直近の試算表や工事概況調等を勘案しつつ、ガイドラインの適用要件等の確認を行った上で回答することとした。
■経営者保証に依存しない融資の具体的内容
・当行の営業店では、案件受付票の作成に合わせ、今回新設した「経営者保証に関するガイドラインチェックシート」を活用し、適用要件の確認を実施している。当該手続による確認の結果、以下のような点を勘案し、経営者保証を求めないで新規融資に応じることとした。
1)決算書類について「中小企業の会計に関する基本要領」に則った計算書類を作成し、地元の大手会計事務所が検証等を行っているなど、法人と経営者の関係の明確な区分・分離がなされていること
2)内部留保も厚く堅固な財務内容を維持しており、償還面に問題がないこと
3)四半期毎に試算表等の提出を行うなど、当社の業況等が継続的に確認可能なこと
・当社とは、長年の取引を通じてリレーションシップは十分に構築されている。震災復興関連工事の増加による業況の拡大が、ガイドラインで求められている返済能力の向上に寄与している面は否めないが、当社が、外部専門家による検証等を含め、経営管理の強化に従来以上に取り組むことを表明していることから、当行としても、業況の把握に留まらず、当社の経営管理体制の構築について引き続き積極的にアドバイスを行っていく方針である。
ご覧いただいた通り、個人保証を入れずに済むためには要件があります。当該案件の場合、下記の要件を満たしていることが、個人保証を求めない要因となっています。
決算書に信憑性があること。
財務内容が良好であること。
経営状況を継続的にディスクローズする体制が整っていること。
業況や財務内容だけでは不十分で、高い経営品質を求められていることが分かります。毎月の試算表はもちろん、資金繰り表等を用いて金融機関と円滑なコミュニケーションを取れる体制の構築が必要です。