【実践コラム】数値計画書作成のコツ

現実的に支出可能な経費から作成するとスムーズです

お客様の新規事業計画書の作成をお手伝いしました。ある商品を仕入れてインターネットで販売する事業です。以下、お客様とのやり取りです。

私:どれぐらい売れば黒字化する見込みですか?

お客様:売上によって原価や経費が変わりますので計算に苦労しています。300万円の売上高でも経費を抑えれば利益は出ますし、500万円の売上高だと経費も増えるので逆に赤字になる場合も・・・・

私:売上を基準に考えるより、経費を基準に考えてはいかがでしょうか?まずは、いくら売れそうかではなく、現実的にいくら原価や経費をかけられるかを検討してみましょう。家賃や正社員の人件費など、売上がゼロでも必ずかかる費用はどれぐらいでしょうか?

お客様:月100万円ぐらいでしょうか。

私:では次に、商品の粗利率はどれぐらいでしょうか?

お客様:20%は取れると思います。ただ、モールの手数料が5%、広告費が5%ぐらいかかります。

私:では粗利率10%で計算しますね。固定費100万円÷粗利率10%が損益分岐点となります。1,000万円の売上で利益トントンとなりますが、固定費100万円の陣容で1,000万円の販売は可能でしょうか?

お客様:いえ、今の人数だと500万円ぐらいが精一杯です。

私:そうですか。では、固定費をもっと下げることは可能でしょうか?

お客様:人件費が大きな割合を占めますが、人員を減らすのは嫌ですね。

私:それでは粗利率を上げるしかないですね。仮に粗利率を15%で計算すると、売上高が667万円で利益トントン、20%だと500万円で利益トントンです。

お客様:なるほど。粗利率が10%上がれば半分の売上で黒字を確保できるのですね。仕入先を見直すなどして何とか粗利率を上げる策を講じてみます。

私:承知しました。次に資金繰りを見てみましょう。今回の事業に投資できる資金は700万円ですね。固定費が月100万円ですので、仮に売上が全く無かったら、7か月で資金が底をつきます。ですので、何とか半年程度で損益分岐点売上高500万円を確保したいですね。

お客様:それぐらいの時間があれば大丈夫だと思います。確かに売上高から原価や経費を予測するより、実際に投資可能な原価や経費から売上高を予測する方が現実的で分かりやすいですね。ありがとうございます。

よくある売上計画の作成方法として、市場規模の何%を獲得できるかを予測する方法があります。もちろん一つの手法ですが、売上を立てるためには、先に原価や経費の支出が必要であることを忘れてはいけません。

資金力に乏しい小規模企業の場合、支出可能な原価や経費を先に算出し、それを賄うにはどれぐらいの売上が必要か、そして、その売上は実現可能性があるのか。という視点で組み立てていくのがコツです。