【実践コラム】従業員に不正を働かせないために
業務プロセスの定期診断を行いましょう
経理担当者が数年に渡って会社のお金を着服していた等、従業員による不正のニュースがしばしば流れます。ニュースになるほど多額ではないにせよ、どの会社でも起こり得る出来事です。従業員の不正は経営者の責任です。従業員を犯罪者にしないためにも、決して他人事と考えず、日ごろから管理体制をしっかり整える必要があります。
最も不正が発生しやすいのは、現金取引が多い業種です。ある飲食店では、実に売上の1%程度が不正によって失われていたという報告もあります。1日の売上高が10万円とすると、その1%は1,000円です。1日あたりの不正金額は少額でも、年間に換算すると36万5千円となります。営業利益率を5%とした場合、36万5千円の利益をカバーするためには、月商の約2か月分となる730万円の売上が必要です。大き過ぎる損失です。
仕入や経費の水増し等もよくある手口です。目立たない程度に会社の預金を引き出し、仕入として会計処理を続ける不正です。仕入担当者が仕入先と結託し、振込金額の一部を仕入先から従業員にキックバックする形を取られると、見抜くのはさらに難しくなります。
不正が起きるのはお金を扱う部署だけではありません。最近では、個人間で物品を気軽に売買できるウェブプラットフォームがいくつもあります。会社の備品や材料を盗み、インターネットで販売する不正も増えています。
もちろん不正を働く社員が悪いのですが、不正を働ける環境を放置している経営者にも大きな責任があります。(信頼しているからと言って)1人の社員に経理業務を任せっきりにしていたり、仕入や在庫管理を現場任せにしたりしていないでしょうか。経営者のずさんな管理体制が従業員を犯罪者にしてしまっている可能性もあります。
また、不正は税務面から見ても問題です。経営者は知らなかったとは言え、結果的に仕入や経費を水増しして申告しているため、利益の過少申告が問われます。従業員にお金を奪われたうえ、さらに追加の税金も負担しなくてはなりません。
コロナ禍により利益を出すのが本当に難しい経営環境が続いています。不正という目に見えない資金流出を防止するためにも、業務プロセスの再確認と定期検査等の導入を検討してはいかがでしょうか。是非、ご相談ください。