【実践コラム】売掛金が増えて資金繰りが苦しくなるときの見直しポイントについて
回収条件は一度決めたら終わりではなく、運用で改善できる余地があります。
前回は、利益と現金のズレを早めに見つけるために、現預金、売掛金、在庫、買掛金、返済の動きを毎月確認する話をしました。今回は、売掛金の増加が資金繰りを圧迫するときに、社長が最初に見直したい実務ポイントを整理します。
売掛金は売上が伸びるほど増えやすくなります。成長に伴う増加は自然な面もありますが、売掛金の増え方が売上の伸びを上回るときは、資金が外に滞留している可能性が高まります。
キャッシュポジションを最低でも月商一か月分以上に保つためにも、早めの手当てが必要になります。
最初に確認したいのは、売掛金の中身です。売掛金は一つの数字に見えても、取引先ごとに状況が違います。増えている原因がどの取引先かを特定することで、対策は急に具体的になります。
次に確認したいのは、回収条件と実際の入金のズレです。契約上は月末締め翌月末入金になっていても、実際には翌々月にずれ込むことがある。こうしたズレが常態化すると、売上が伸びた局面で資金繰りが一気に苦しくなります。入金予定日と入金実績が一致しているかを月次で把握することが基本になります。
三つ目は、請求のタイミングです。請求書の発行が遅れると入金が後ろにずれます。検収が遅れると請求が切れません。社内の運用が原因で回収が遅れているケースは少なくなく、請求業務を早めるだけでキャッシュが改善する会社もあります。
四つ目は、取引条件の見直しです。全社一律で回収条件が決まっている会社でも、取引先によって交渉余地はあります。新規取引では前金や一部前受を取り入れる、取引が増える局面では支払条件を短くする交渉をする、大型案件では中間金を設定する。こうした設計ができると、売上拡大と資金繰りの両立がしやすくなります。
五つ目は、与信の考え方です。売掛金が増える会社は、信用リスクも増えます。回収が遅れている取引先がある場合、追加受注を増やす判断は慎重にしたいところです。売上を取りに行く判断と、資金を守る判断を分けて考える必要があります。キャッシュが薄い局面では、売上より回収を優先する判断が必要になることもあります。
売掛金の改善は、いきなり厳しい交渉をする話ではありません。中身を把握し、入金のズレを見える化し、請求の運用を整え、取引条件を必要な範囲で見直す。この順番で進めると現実的です。
売掛金は会社の成長の証拠でもあります。一方で、資金繰りを最も圧迫しやすい要素でもあります。月商一か月分以上のキャッシュを守る基準を置くなら、売掛金の増加には早めに手を打つ。この姿勢が、黒字なのに資金が薄くなる状態を防ぎます。

