【実践コラム】倒産回避資金の調達について

金融機関の決算月となる3月がチャンスです。

銀行融資の営業はやや特殊です。融資をしなければ利益は上がりませんが、融資を行えば、同時に貸倒れのリスクも発生するため、貸したいような貸したくないような複雑な心境で営業をしています。

また、資金使途が適切でなければ融資が出来ない点も営業を難しくしています。お客様から融資を受けたいという意思表明があり、かつ信用状況が良くても、実需に伴う資金使途が無くては融資をすることができません。

銀行は、事業に必要な資産を購入する場合の融資には前向きです。例えば、工場建設や事業拡大に伴う用地取得などが該当します。一方で、将来の値上がりを期待して土地や株式を購入する投機的な目的での融資は行いません。

この方針の背景には、過去の苦い経験があります。かつて銀行は、土地、株、ゴルフ会員権など、投機目的の購入資金に対して積極的に融資を行っていました。その結果、深刻な資産バブルを引き起こし、経済に大きな混乱をもたらしたのです。

この反省から、現在の銀行は、実体経済に資する目的の融資に注力し、投機的な資金需要には慎重な姿勢を取っています。つまり、明確な事業目的がある場合にのみ、融資の検討が可能になります。

実は、資産の購入を目的とした設備資金だけでなく、運転資金にも同様の考え方があります。その企業にとって必要と考えられる運転資金の額を算出する算式があり、それを超える融資は、たとえ企業業績が良くても難しくなります。事業資金であっても、実需以上の融資は行わないというスタンスです。

当事務所では、不測の事態に備えて「借りられる時に借りられるだけ借りておく。」ことを提唱しておりますが、実は不測の事態に備えるための「倒産回避資金」なる資金使途はありません。あくまでも「運転資金」として調達しなくてはなりませんが、先ほどの算式で得た額を超える運転資金を調達するにはコツが必要になります。

運転資金を多めに借りることが出来るコツのひとつは銀行の決算です。融資残高目標を達成するため、一般企業の決算セールに該当するようなものが実際にあります。当事務所にも「3月末までに○○億円を融資したいのでお客様のご紹介をお願いします。」と金融機関の担当者が熱心にあいさつに来られます。
普段はお客様から融資を依頼される銀行ですが、この時期は銀行の方からお客様に融資を依頼するケースが増えますので、実需を超えた資金を融資してもらえるチャンスがあります。

借金が増えるのは嫌だからと銀行からの融資提案を断る社長様もおられますが、借金があっても同等の預金があれば実質無借金です。もし銀行から融資の提案があれば、将来の不測の事態に備えて借りることをためらわず、キャッシュポジションを高く取っておくと安心です。