【実践コラム】倒産しない

倒産を決めるのは経営者の意思です

物の本によると、倒産とは、「企業が債務の支払不能に陥ったり、経済活動を続けることが困難になった状態を指す。法的倒産と私的倒産の2つに大別され、法的倒産では再建型の会社更生法と民事再生法、清算型の破産と特別清算に4分類される。私的倒産は、銀行取引停止と内整理に分けられる。」と定義されています。

しかし、厳しい状況に追い込まれながらも倒産を選択せずに事業を継続している社長様もいらっしゃいます。家賃や人件費が払えない、返済ができないからと言って倒産するとは限りません。基本的には、経営者の意思で法的整理や私的整理等の行動を起こしてはじめて倒産となります。倒産するかどうかは経営者次第です。

ある社長様の事例です。第三者から資金支援を受けて事業拡大に挑戦しましたが、出店した新店舗が軌道に乗らず、会社全体の資金繰りが悪化してしまいました。やむを得ず新店舗の撤退を決断したところ、スポンサーから支援の打ち切りだけでなく、これまで受けた支援資金の返済を執拗に迫られるようになりました。

ご相談に来られた時は、倒産しか選択肢はないと思い込んでおられましたが、倒産するかどうかは社長様次第であることをご説明したところ、「債務免除を受けて今が楽になっても、就職はすぐに出来ないだろうし収入がなくなるのは困る。止める事はいつでも出来るので、もう少し頑張ってみよう。」という結論に至りました。

継続を前提として資金繰り予測を立てたところ、銀行と大家さんの協力があれば、何とか資金が回ることを確認できたため、計画書類を作成して銀行と大家さんのところへ出向きました。大家さんは延滞分の分割払い、銀行は返済猶予に快く応じてくださいました。

それから約1年後、売上は大きく落ちましたが、僅かながら黒字決算となりました。スポンサーからの嫌がらせも徐々に収まっているようです。社長様は、「この調子でいけば債務の返済も少しずつできそうだ。1年前は現状から逃げることばかり考えていたが逃げなくて良かった。おそろしい程メンタルが強くなっただけかもしれないが、今考えると何てことはない。」と笑っておられました。

この選択が正しかったかどうかは分かりませんが、倒産しないというのも一つの選択肢です。