【実践コラム】中小企業と財務指標

財務指標をどの程度意識して経営すべきでしょうか

利益率、流動比率、自己資本比率など、財務指標には多くの種類があります。中小企業は財務指標をどの程度意識して経営すべきでしょうか。

自己資本比率で考えてみます。自己資本比率とは、総資産に占める自己資本(主に資本金と利益剰余金)の割合です。財務の教科書には、自己資本比率は高い方が良いと書かれています。

例えば、一切借入を行わず、全ての支払いを先払いし、黒字を確保できれば、自己資本比率100%を維持できます。しかし、事業に使える資金は少なく、キャッシュフローも悪いので、大きなビジネスは育ちにくくなります。

一方、資本金10百万円の企業が30百万円の借入れを行った場合、自己資本比率はたちまち25%に低下してしまいますが、40百万円という大きな資金を事業に使うことができます。

優秀な経営者であれば、自己資本の範囲内で小さく事業を行うより、他人資本を活用して事業を行った方が、より大きな売上や利益を生み出すことができます。

自己資本比率は、利益が蓄積されれば結果的に良くなります。最初から自己資本比率を高く維持しようと考えて経営を行うのは本末転倒かもしれません。

他にも財務指標はたくさんありますが本質的には同じです。自社の過去や業界平均等と比較して、財務状況を客観的に把握するには大変有効な指標ですが、指標そのものが経営の目的にはなりません。

財務指標を過度に意識するあまり、売上と利益の拡大を目指すという経営の本質を見失わないようにしてください。