【経営コラム】イノベーションの主体者は生産者側!

新しい何かを生み出す5つの新結合(シュンペーター)

『経済における革新は、新しい欲望がまず消費者の間に自発的に現われ、その圧力によって生産機構の方向が変えられるというふうに行われるのではなく…(略)…、むしろ新しい欲望が生産の側から教え込まれ、したがってイニシアティブは生産の側にあるというふうにおこなわれるのが常である』
(ヨーゼフ・ シュムペーター )

■成熟社会における商品やサービスの開発について、大きなヒントを、シュンペーターは提供してくれています。

・過去の経験や知識を探るだけでは、なかなか良い商品・サービスは生み出せません。
・もう一つ、大局的な創造力・提案力が必要です。

○日常的に高頻度で消費する食品や雑貨、様々なサービスを、消費者の近隣に高密度で配置したコンビニチェーン、この業態を消費者は自ら望んだでしょうか?これらを利用してその恩恵を知り、結果としてなくてはならないそれになったはずです。

○街中のいたるところに出来上がったコインパーキング場、自動車を足として利用する人たちにとってはなくてはならない存在です。小規模な遊休地を活用して、時間単位で課金する仕組みを開発できたからこれらが成立しています。

○スマートフォンを手元に置いているはずです。この様な機能を備えたIT端末を消費者は自ら望んだでしょうか?こんなことができるから、便利で楽しいから、…ぜひ使ってください、といわれて使い始めたら手放せなくなったはずです。

■シュンペーターは、これらの新しい何かを生み出すために『5つの新結合』を提唱しています。

1.新しい財貨(製品)
 ・消費者がまだ知らない製品、または品質など。
2.新しい生産方式
 ・新しい生産方式や取扱い方法など。
  フランチャイズ方式なども含まれる。
3.新しい販路の開拓
 ・従来の販売先ではない先など。
4.原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
 ・原料や半製品の新しい使い方など。
5.新しい組織の実現
 ・古い企業ではなく、新しい企業の出現など。

シュンペーターは、これらの新結合(イノベーション)を起こす経営者のことを企業家(起業家)と呼んでいます。また、企業家であることと、事業を単に運営することとは別の行為であると区別しています。

■シュンペーターは、変革を妨げる三つのハードルとして以下を挙げています。

1.経験よりも洞察を必要とするが、経験に頼りがちであること。
2.実証されていない新しいことを始める難しさ。
3.新しいことを始めることで受ける、社会からの抵抗と批判。

シュンペーターは、新結合を狙う企業家は、(当初は)潮の流れに逆らって泳ぐようなものだ、とも述べています。

■シュンペーターが提唱するイノベーションとは…

1.新たな欲望を生む魅力を消費者に提示する。
2.5つの新結合をヒントにする。
3.企業家であり続ける。

今から事業を立ち上げる経営者だけでなく、今隆々と経営を続けている経営者にも、イノベーションは必要です。継続してイノベーションを続けて行かなければ、いつかは衰退の憂き目に甘んじるからです。

『社会の上層はいわばホテルのようなものであって、いつも人々で一杯ではあるが、いつも違った人々で一杯なのである。この人々というのは、われわれ多くのものが認めようとするよりもはるかに著しい程度で下から上がってきた人々である。』
(ヨーゼフ・ シュムペーター)

引用図書:「古代から現代まで2時間で学ぶ戦略の教室」(ダイヤモンド社、鈴木博毅氏著)